海外旅行の通信手段といえば、長らくレンタルWiFiルーターを使っていました。レンタルWiFiの良い点は、空港のWiFi店で取扱いを説明してくれる点や説明書が付いている点など安心材料がしっかりしていたからです。
ただ、正直なところ「充電を忘れずに」「紛失しないように」「帰国後は返却」と、地味に荷物と手間が増えるのが少しストレスでした。
今回、上海経由でエジプトに行くにあたり、初めて「eSIM」に挑戦することにしました。調べながら実際に感じた疑問や勘違いをそのまま記事にまとめています。同じようにeSIMが初めてで不安な方の参考になればと思います。
eSIMとは?物理的なSIMカードとの違い
eSIMは「embedded SIM(埋め込み型SIM)」の略で、スマホ本体にあらかじめ内蔵されているチップに、データを書き込んで使う仕組みです。
一番の疑問だったのが「購入すると何が届くの?」という点でした。答えは、物理的なカードは一切届かず、メールで送られてくる「QRコード」を読み込むだけというシンプルなものでした。
- eSIMを購入する
- メールでQRコードが届く
- iPhoneの「設定」→「モバイル通信」→「eSIMを追加」でカメラでQRコードを読み込む
- 数十秒で設定完了
Suicaのチャージ画面でバーコードを読み込むのと似たイメージで、届くのを待つ時間もなく、即日使えるのが大きな魅力です。

レンタルWiFiと比べたeSIMのメリットとデメリット
これまでのレンタルWiFiと比較すると、次のような違いがありました。
eSIMのメリット
- 荷物が増えない:ルーター本体を持ち歩く必要がない
- 充電の心配が減る:スマホ本体の充電だけ気にすればいい
- ルーターの修理などの補償金が不要:そもそもルーターが必要ないため、紛失や破損対応の費用がかからない
- 空港での受け取り・返却が不要:紛失・返却忘れのリスクがない
eSIMのデメリット
- 出発空港で誰も使い方を説明してくれない:これまでのレンタルWiFiでは、受取る際に担当者から説明がありました。eSIMは最後まで人による手渡しや説明はなく、不安に思いました。
- 複数人での分け合いはできない:1台1台個別に契約する必要がある(グループ旅行では逆に注意点)
私は、不安はありつつも「持ち物を減らしたい」という一点だけでも、eSIMに切り替える価値はあると感じました。荷物の少ない私にとって、ルーターは、化粧ポーチ一つ分くらいの荷物になります。
自分のスマホがeSIMに対応しているか確認する

eSIMを使うには、まずスマホ自体が対応機種である必要があります。
iPhoneの場合、「設定」→「モバイル通信」を開き、「eSIMを追加」という項目があれば対応しています。目安として、iPhone XS(2018年発売)以降のモデルはほぼ対応済みです。
対応機種を確認したら、次は自分の行き先で使えるかどうかのチェックです。
複数の国をまたぐ乗り継ぎがある場合の選び方
今回、旅程の都合で中国を経由してエジプトに向かうことになり、「2つの国をまたぐ場合、eSIMはどうすればいいのか」で悩みました。
多くのeSIM会社は「1つの国専用プラン」が基本で、地域をまたぐプランは限られています。そこで見つけたのが、Airaloの「Discover」という世界138ヶ国をカバーするグローバルプランです。これなら中国の空港での乗り継ぎ時間も、エジプト到着後も、eSIMを切り替えることなく1つで済みます。
購入前に必ず確認したいのは以下の3点です。
- 対応国に行き先がすべて含まれているか
- データ容量(GB数)が動画視聴などの用途に足りるか
- 有効期間が旅行日程をカバーしているか
気になる料金の目安
初めてだと「実際いくらかかるの?」が一番気になるところだと思います。参考までに、Airaloのグローバルプラン「Discover」の目安はこのくらいです。
- 1GB・7日間:約1,400円
- 2GB・15日間:約2,600円
- 3GB・30日間:約3,700円 ※為替レートにより変動します。
グローバルWiFiのレンタル料金(1日あたり1,000円前後かかることも多い)と比べると、短期の旅行であればeSIMの方が割安になるケースが多い印象でした。
ただし、現地で動画をたくさん見る予定がある場合は、容量が大きいプランを選ばないとすぐに足りなくなるので要注意です。
到着後にやること:実は「オンにする側」と「オフのままの側」がある
現地に着いてからの操作、最初は「ローミングって結局オンなの?オフなの?」と混乱しました。実は、どの回線の話をしているかで、答えが真逆になるというのがポイントでした。
やること(新しいeSIM側)
- 「設定」→「モバイル通信」で、新しいeSIMの回線をオンにする
- 「データ利用回線」を、新しいeSIMに切り替える
- 新しいeSIM(Airalo)側の「データローミング」は、オンにする
やらないこと(日本の回線側)
- 日本の回線(docomo・au・UQ mobileなど)は解約不要。そのまま何も触らず放置でOKです
- 日本の回線側の「データローミング」という項目は、普段の設定では基本的にオフになっています。このオフのまま、絶対に自分でオンにしないでください
ここで一番混乱したのが、この「データローミング」という同じ名前の項目が、回線ごとに別々に存在するという点でした。日本の回線をタップして出てくる説明文には、「海外旅行中に電話をかけたり、ウェブをブラウズしたりするには、データローミングをオンにします」という説明文が出てきます。この文章だけを読むと、「海外に来たんだから、オンにするのが正解では?」と思ってしまいがちです。
しかし、これはeSIMのような別の安い通信手段を用意していない人向けの説明です。日本のキャリアの電波を、海外で”間借り”して使う仕組みのため、料金がとても高く、数分のネット利用で数千円〜数万円の請求につながることもあります。
一方で、Airalo側の「データローミング」は、オンにしないと逆にAiralo自体が繋がりません。そもそもAiraloのようなグローバルeSIMは、「現地の通信会社の電波と提携(ローミング)して使う」仕組みそのものだからです。同じ「データローミング」という言葉でも、
- 日本の回線側:オンにすると危険(高額請求のリスク)
- Airalo(eSIM)側:オンにしないと使えない(接続に必須)
と、真逆の意味を持つという点を、最初にしっかり区別しておくことをおすすめします。触るべきは新しく追加したeSIM側の設定で、日本の回線側は最初から最後まで一切触らない、というのが正解です。
現地で繋がらない時の対処法
準備を万全にしたつもりでも、現地で「あれ、繋がらない」となることはあります。慌てず、以下の順番で確認してみてください。
- 機内モードを一度オンにして、5秒待ってからオフに戻す
通信をゼロから掴み直す、一番手軽で効果の高い方法です。まずはこれを試してください。 - 「設定」→「モバイル通信」を開き、新しいeSIMの回線が「オン」になっているか確認する
うっかりオンにし忘れているだけ、というケースは意外とよくあります。 - 「データ利用回線」が、きちんと新しいeSIM側になっているか確認する
日本の回線のままになっていないか、念のため見直します。あわせて、新しいeSIM(Airalo)側の「データローミング」がオンになっているかも確認してください。ここがオフのままだと、eSIM自体が現地の電波と繋がりません。 - スマホ本体を再起動する
一時的な不具合の多くは、これだけで直ります。 - eSIM会社のサポートに問い合わせる
Airaloなど主要な会社は、アプリ内チャットで24時間サポートを受け付けています。上記を試しても直らない場合は、遠慮なく問い合わせて大丈夫です。
万一のために、次のリスクヘッジの章で触れた「別会社の予備eSIM」や「ホテル・空港の無料WiFi」があると、この間もネットが完全に途切れずに済みます。
1つのeSIMに頼るのが不安な人へ:リスクヘッジの方法
口コミには「現地に行ったけど、繋がらない箇所があった」「いつもはすぐに繋がるのに今回は6時間かかった。」等の投稿もあり、「1つのサービスに全部頼るのはやや冒険では」と感じ、以下のような分散策を取り入れることにしました。
- 別会社の小容量eSIMをもう1つ保険として用意する
- 空港やホテルの無料WiFiも併用する
- 見たい動画はNetflixやAmazonプライムビデオの「ダウンロード機能」で事前に端末へ保存しておく
- Googleマップの「オフラインマップ」を主要都市分だけ事前に保存しておく
これらを組み合わせておけば、万が一eSIMの調子が悪くても、致命的な「通信ゼロ」の状態は避けられます。
なお、私の場合、モバイルはUQ mobileを利用しているのですが、「au海外放題アプリ」を事前に入れておくと、現地で1日1000円程度でwifiが利用できるので、そちらを利用しようと思いました。
初めてのeSIMでよくある疑問Q&A
最後に、調べる中で自分がつまずいた素朴な疑問をQ&A形式でまとめておきます。
Q. eSIMは古い機種でも使える?
A. iPhoneならXS(2018年発売)以降がほぼ対応しています。「設定」→「モバイル通信」に「eSIMを追加」の項目があるかで確認できます。
Q. 動画を撮るだけならデータ(GB)は減る?
A. 減りません。スマホでの動画撮影はあくまで本体のストレージを使うだけで、通信(GB)を消費するのは「送信」や「視聴(ストリーミング)」をしたときだけです。
Q. eSIMを入れたら、元の日本の回線は使えなくなる?
A. なりません。「データ利用回線」をeSIM側に切り替えるだけで、日本の回線自体は解約されずそのまま残ります。電話番号もそのまま維持されます。
Q. 1つのeSIMだけで本当に大丈夫?
A. 基本的には問題ないはずですが、心配な場合は別会社の小容量eSIMをもう1つ保険として入れておくと安心です。iPhoneは複数のeSIMを保存でき、必要な時に切り替えられます。
まとめ
グローバルWiFiのレンタルからeSIMに切り替えることで、荷物と手間はかなり減りました。特に「届くのはQRコードだけ」「現地ではスイッチ2つの操作だけ」というシンプルさは、初めてでも十分扱えるレベルです。
ただし、「日本の回線のデータローミングはオフのまま、Airalo側のデータローミングはオンにする」という区別と、「1つのサービスに頼りすぎない」という基本だけは、事前にしっかり押さえておくことをおすすめします。
編集後記
実は成田に行くまで「本当にeSIMだけで大丈夫だろうか」と不安になりました。
何せ使ったことがないし、日本国内で都会でさえも通信が良くない箇所がありますし、まして海外ならばなおさらではないかと。
リスクヘッジとして格安のeSIMをもう一本追加しておくか、現地でSIMカードを調達するか、と迷いましたが、よく考えてみたら、自分の使っているスマホはどことも契約しなくても、海外で使用できることを思い出したのです。
着陸してタラップを降りたら、まず機内モードをオフにする!
この原則にしたがって、機内モードオフ→eSIMをオン
初めての手段に完全に乗り換えるのは、やはり勇気がいるものです。だからこそ、この記事で紹介した「予備のeSIMを用意する」等のリスクヘッジをしてもよいかもしれません。
これから初めてeSIMに挑戦する方も、「絶対に成功させなければ」と気負わず、逃げ道を1つ2つ用意した上で、気軽に試してみてほしいと思います。

